2008-03-01から1ヶ月間の記事一覧

アンナ・カレーニナ(中)(下) トルストイ

再開したキチイとリョーヴィンは皆に祝福されて結婚する。一方、アンナは夫カレーニンの離婚の申し出を息子への愛から 拒絶し、ヴロンスキーと外国旅行へ旅立つ。 帰国したヴロンスキーは自分の領地の農地経営に乗り出すが、 それは、機械化された見事に近代…

サロメ ワイルド

ワイルドの名を世間的に最も華やかにしたのは、戯曲、特に喜劇 であった。特に「真面目が大事」は大成功をおさめた。 「サロメ」はこの喜劇作品が執筆される直前にパリ滞在中に書かれた ものである。しかし、イギリスでは上演さえ許されなかった。 しかし、…

はつ恋 ツルゲーネフ

ツルゲーネフは、地主貴族文化が崩壊し始めた頃に、もっとも大切な 精神の形成期を、ほかならぬ貴族の子弟として迎えました。 その運命的な契合はツルゲーネフの人生観の上にも作風の上にも 消しがたい烙印を押しています。更に、母親は気丈でヒステリックで…

アンナ・カレーニナ(上) トルストイ

文豪トルストイが、モラル、宗教、哲学のすべてを注ぎ込んで 完成した不朽の名作の第1部。18歳の少女キチイは、ヴロンスキーからの求婚を信じて、 古くから付き合いのあるリョーヴィンからの求婚を断ってしまう。 しかし、ヴロンスキーはモスクワ駅へ母を…

自我と無意識 C.G.ユング

ユングが多年にわたる経験から得た所見をできるだけ平易に 解説した本。ペルソナ、アニマ、アニムス、自己といったユング 心理学の基礎概念について、丹念に説明してある。本書の中で、ユングは人類には共通の無意識が存在すると 指摘している。それを集合的…

彼らの流儀 沢木耕太郎

コラムでもなく、エッセイでもなく、ノンフィクションでもなく、 小説でもない―そんな33の短編集。 それぞれの登場人物には登場人物なりの「流儀」が描き出されて いる。この作品の素晴らしいことは、「起承転結」ですべての短編が 書かれていること。 そ…

武装解除 伊勢崎賢治

職業:「紛争屋」 職務内容:多国籍の軍人・警官を部下に従え、軍閥の間に立ち、 あらゆる手段を駆使して武器を取り上げる。 という変わった仕事をしている伊勢崎の本。彼の専門は復興期のDDR(Disarmament、Demobilization& Reintegration :武装解除、…

水いらず サルトル

「水いらず」をはじめとするサルトルの短編集。 中でも「壁」が秀作である。 「壁」はスペイン内乱を取材したものであり、戦乱時に執筆された ものである。 「壁」とは夜明けとともに死刑囚がならぶものであり、同時に 実存哲学の限界状態を示す。 実存主義…

変身 カフカ

グレーゴル・ザムザは、ある朝目を覚ますと自分が巨大な毒虫に 変貌しているのに気づく。彼は、血を分けた家族からさえも 疎まれる存在となる。カフカの文学の特徴は、徹底的に写実的な手法によって、純粋に 象徴的なものを表現する点にあり、ヨーロッパのニ…

終りし道の標べに 阿部公房

阿部公房幻の処女作。 青年公房の生身の思索は17年後書き換えられ、もはや読むことが できなくなってしまった。 本書は処女作の仮名遣いや旧字体を新字体に変換したものである。 親友が中国人たちとともに盗みを働き、結核性の肋膜炎となり 死亡した事実を…

百頭女 マックス・エルンスト

「ひゃくとうじょ」って読むらしい。 マックス・エルンストはドイツ出身のシュルレアリズムの 代表的な作家であり、コラージュやフロッタージュといった 新たな技法を取り入れた。 緒言ではシュルレアリズムの思想家、アンドレブルトンが 寄稿している。本書…

雪 オルハン・パムク

日本ではあまりなじみのないオルハン・パムクについて少々 解説したい。 本書はオルハン・パムクの7作目の作品であり、最初で最後の 政治小説と言われている。 代表作としては他に「わたしの名は紅」がある。2007年度 ノーベル文学賞受賞。物語の舞台は…

われ笑う、ゆえにわれあり 土屋賢二 

この本は娯楽本である。 よって公共の場で読むことはお勧めしない。 なぜなら、ぷっと吹き出してしまうからである。作者は御茶の水大学の哲学科の教授である。 ゆえに、哲学っぽい内容ではあるが、その屁理屈が笑える。 特に餃子の話は面白い。 また、タバコ…

海と毒薬 遠藤周作

この作品は、第二次世界大戦中の話である。医師である勝呂は、大戦中捕虜の人体実験に参加していた。 この人体実験は、実話である。 日本軍は、アメリカ人捕虜の肺を切り取り、どこまで切っても 死なないか等の非人道的な人体実験を九州大学医学部で行った。…