2008-02-01から1ヶ月間の記事一覧
マゾヒズムという語は、サディズムがサド公爵にちなんでいるのと 同様に、この作家の名から性科学者のクラフト=エビング博士が 取り出したものである。主人公ゼヴェリーンが夢の中で見た美しいヴィーナスは、ある夜、 ヴィーナスの石造から忽然と現実の女性…
大江健三郎の長男が実際に脳に障害をもって生まれてきたのを 機に書き上げた作品。長男は現在作曲家として活躍している。主人公鳥(バード)は、アフリカへの冒険旅行を夢見るモラトリアム 青年である。わが子が頭部に異常をもって生まれてきたことを知り、 …
ハンナ・アレントとはユダヤ人の女流哲学家である。 ナチスによる迫害を逃れるため、フランスに亡命、その後 アメリカへ亡命している。社会には生活があり、その生活はポリス(都市)とオイコス(家庭)から成り立つ。ポリスからはポリティクス(政治)が、…
これは名作である。 ゲーテ自身の絶望的な恋の体験を作品化した書簡体小説である。主人公ウェルテルは婚約者のいる女性、ロッテに恋をする。 その愛し方は、独善的で独りよがりである。 ウェルテルはこう書いている。 「ロッテ以外のものを何も識らず、理解…
ルソーといえば、有名なフランスの思想家である。 教育論「エミール」の自然宗教的な内容がパリ大学神学部から 断罪され、『エミール』は禁書に指定され、ルソー自身に 対しても逮捕状が出たためスイスに亡命した。孤独な散歩者の夢想は亡命後、偽名でパリに…
有吉佐和子はすごい作家である。 女実業家の富小路公子は自殺か、他殺か謎の子を遂げる。 本編では冒頭で富小路公子は死んでしまい、以後全く 登場しないばかりか、どんな人であったかも謎である。彼女に 関わった27人の男女へのインタビューという形で物…
−この物語の登場人物はすべて架空であり作者の想像の産物であるが、 家は実在した−このフレーズとともに始まり、そして終わる物語。 主人公の「ぼく」はサーフィンに夢中で、仕事の合間を縫って ハワイイへ通っていた。波を沖で待っている間におしゃべりした…
ブルトンが謎めいた女性、ナジャに会いたくて仕方がない といった話。次第に二人の間はギクシャクしていき、最後に ナジャは狂ってしまう。それでもブルトンにとっては特別な 思い入れがあったと思われる。 この、ナジャという女性、とってもシュール。 そも…
老人は長い間不漁に見舞われていた。 ある日、老人が漁に出ると、大きな「引き」があった。 4日間の死闘の末、老人は巨大なカジキマグロを釣り上げたが、 帰港の途中でカジキマグロはサメに食いちぎられてゆく。 雄大な自然と闘う老人の姿を徹底した外面描…