デミアン ヘルマン・ヘッセ

デミアン」は1919年に世に出た「問題作」である。
これはヘッセ自身の自伝とも言うべき書であり、
主人公シンクレールと同じ「エーミール・シンクレール」作として
匿名で出版された。

「主人公シンクレールが、明暗二つの世界を揺れ動きながら
真の自己を求めていく過程を描く」とあるが、それだけではない。

カインは実は悪者ではなかったとするデミアンはデーモンのもじり
である。ヘッセであるシンクレールとデミアンはアプラクサスという
不完全な世界の不完全な神に惹かれる。
そして、デミアンの母の異名はエヴァ夫人である。

シンクレールは夢見る。
卵の殻を割って、世界に出てゆくことを。
「卵」の中身は、第一次世界大戦前のキリスト教世界観をもった
世界そのものである。