カイマナヒラの家 池澤夏樹

−この物語の登場人物はすべて架空であり作者の想像の産物であるが、
家は実在した−

このフレーズとともに始まり、そして終わる物語。
主人公の「ぼく」はサーフィンに夢中で、仕事の合間を縫って
ハワイイへ通っていた。波を沖で待っている間におしゃべりした
サーファーの誘いで、カイマナヒラの家に寝泊りする一員になる。
カイマナヒラとはダイヤモンド・ヘッドの現地語である。
家は建築家のチャールズ・ディッキーが建てたもの。開放的な広い
立派な家である。住人たちは家の買い手がつくまでの間、管理人
として住み込んでいる。
本書は、主人公との会話という形で、神様に着陸を禁じられた飛行機の話など、ハワイイ独特の話が挿入されている。
時の移り変わりを人間関係を通して見事に描いた作品。
また、本書は写真家による美しいカラー写真がいたるところに
挿入されており、それを眺めるだけでも楽しい。
最も好きな池澤夏樹の作品である。