水いらず サルトル

「水いらず」をはじめとするサルトルの短編集。
中でも「壁」が秀作である。
「壁」はスペイン内乱を取材したものであり、戦乱時に執筆された
ものである。
「壁」とは夜明けとともに死刑囚がならぶものであり、同時に
実存哲学の限界状態を示す。
実存主義は、普遍的・必然的な本質存在に相対する、個別的・偶然的
な現実存在の優越を主張する思想である。

この作品では、主人公は厳しい拷問に耐え、あるものを守ろうと
する。しかし、最後に待っていたのは、運命のいたずらともいうべき
「偶然」であった。だから主人公は最後に
「涙が出るほど笑って笑って笑いこけた」
のである。