変身 カフカ

グレーゴル・ザムザは、ある朝目を覚ますと自分が巨大な毒虫に
変貌しているのに気づく。彼は、血を分けた家族からさえも
疎まれる存在となる。

カフカの文学の特徴は、徹底的に写実的な手法によって、純粋に
象徴的なものを表現する点にあり、ヨーロッパのニヒリズム
致命的な自己意識に到達したといわれる。

カフカの変身とよく比較されるのが阿部公房の壁である。
壁では主人公は自分の名前を紛失する。
自らの帰属すべき場所を持たない点では変身と同じである。
しかし、壁には変身に漂う暗さは一切ない点が両作品を大きく
異なるものとしている。