海と毒薬 遠藤周作

この作品は、第二次世界大戦中の話である。

医師である勝呂は、大戦中捕虜の人体実験に参加していた。
この人体実験は、実話である。
日本軍は、アメリカ人捕虜の肺を切り取り、どこまで切っても
死なないか等の非人道的な人体実験を九州大学医学部で行った。
その後、得られたデータを元に、手術が行われていたのである。

遠藤周作は、異常な状況における異常な事件を、できるだけ平常な
次元に還元しようと努め、そのことによって日本人の罪責意識
そのものを根元的に問おうとしたのである。

「海と毒薬」というタイトルは、遠藤が九大医学部の建物に
見舞い客を装って潜り込んだ際、屋上で手すりにもたれて雨に
けぶる町と海とを見つめて思いついたとされている。