デュシャンは語る マルセル・デュシャン ピエール・カバンヌ
マルセル・デュシャンといえば、「泉」を
思い浮かべる方も多いのではないだろうか。
ともかく、20世紀の美術に多大な影響を与えた
芸術家であることは疑う余地がない。
しかし、絵画を描いていたのは1912年頃までであり、
芸術家達から冷たい仕打ちを受けたのがきっかけで
絵画制作を止めたと語っている。
その後はタブローを否定しているようにさえ見受けられる。
デュシャンがその後数多く発表した作品は、
「Ready-made(既製品)」である。
これは、既製品に少し手を加えた作品群を指し、デュシャン自身
気に入っていたものである。
デュシャンはまた、「大ガラス」と呼ばれる未完の作品を作成した。
これは、高さ約2.7メートルの2枚の透明ガラスの間に、油彩、鉛の箔、場所によっては「ほこり」で色付けをした作品である。
その東京バージョンは、東京大学教養学部美術博物館で常設展示
されているので、是非見に行きたいものである。
精神疾患とパーソナリティ ミシェル・フーコー
フーコーの思想は、ニーチェとハイデッガーの
影響を受けているといわれている。バタイユの影響も受けたと
されているが、後にフーコーはバタイユを批判している。
本書では、精神の医学と身体の医学との関係に注目している。
以下、印象的だった事柄について書きます。
フーコーは精神疾患の主観性の分析を行っている。その中で、
退行論、発生論、を経て現存在分析へと至る。これらは、弁証法的
につながっている。そして、これらのモデルから、病の中枢に
存在するのは「不安」だと結論付けた。
人間、不安が大きいと精神疾患に至るのである。そう考えると、
精神疾患がありふれたものである事が容易に分かる。
この、「精神疾患とパーソナリティ」は、フーコーの処女作であるが、本人はこれを否認し、「狂気の歴史」を自分の処女作と
呼び続けたそうである。
嘔吐 J-Pサルトル
『嘔吐』(おうと、La Nausée)は実存主義者の小説家ジャン=ポール・サルトルが1938年に著した小説であり、サルトルの精神形成を知る上で欠かすことのできない、実存主義の聖書と言われている。
大学教授であった頃の作品で、彼の著作の中で最も良く知られるものの1つである。カフカの影響を受けているとされる。
主人公ロカンタンは、ある日「吐き気」に気づく。
「吐き気」の正体は分からぬまま、頻度は増してゆく。
やがてロカンタンは「吐き気」が「実存」に対するものだと
気づく。「実存」とは、目に見えるものだけではなく、音楽などの
目に見えないものもそうである。また、思考そのものも「実存」
であり、生や死も「実存」である。そして実存である生や死は
偶然であるとする。これが実存主義であり、その考えを端的に
著しているのが短編小説「壁」でもある。
「嘔吐」と「壁」の入っている「水いらず」どっちもお勧めの
一冊である。